アメリカン・スナイパー(2014,米)

アメリカン・スナイパー ―気を使いすぎてどっちつかず―


ストーリー:イラク戦争に出征した、アメリカ海軍特殊部隊ネイビーシールズの隊員クリス・カイル(ブラッドリー・クーパー)。スナイパーである彼は、「誰一人残さない」というネイビーシールズのモットーに従うようにして仲間たちを徹底的に援護する。人並み外れた狙撃の精度からレジェンドと称されるが、その一方で反乱軍に賞金を懸けられてしまう。故郷に残した家族を思いながら、スコープをのぞき、引き金を引き、敵の命を奪っていくクリス。4回にわたってイラクに送られた彼は、心に深い傷を負ってしまう。(以上,シネマトゥデイより)



どうしても初日に観たくてユナイテッドシネマ・キャナルシティIMAX、2320の回で鑑賞。初のIMAX体験。画面でかいし音すごいし、びっくりした。もっと早く体験しておけばよかったな。戦車が猛スピードで突っ込んでくる場面なんて跳ね飛ばされるかと思った。

さて、忘れないうちにいくつかメモ。よくできてるとは思うけど,あまり面白くなかった。その理由を考えてみる。あとで追加修正する可能性大。

人物描写がペラい。登場人物みんなだけど、特に主人公のクリス。この戦争の何に問題を感じ、何に葛藤をしていたのか?

そもそも30歳まで放浪のロデオ生活をしていた主人公がなぜ唐突に愛国心に目覚め,人が変わったようにエリート軍人としての人生を選ぶのかが分かりにくい。父親の影響,テレビの報道が引き金…など一応ヒントはあるのだが,これだけでは弱い。

それからラストの家族のシーン。それまで全く描かれてこなかった家族だんらんの様子が唐突に描かれる。どういう経緯かはわからないが,一応(?)トラウマは乗り越えた様子。だけど、どうやって乗り越えた?直前の退役軍人たちとのかかわりによって主人公も成長したということか。しかし本人は,負傷軍人たちをサポートする気はあっても,彼らにサポートされるつもりは全くない様子だった。つまり,自分が治療の必要があるある種の病を抱えていることは決して認めたくない様子だった。もちろん周りから見れば,彼には何らかのサポートや治療が必要なことは明らかだ。では彼はどうやって病を乗り越えたのか。いやそもそもどうやって病を認めることができたのか。そのあたりのクリスの心情の変化や人間的な成長の様子が全く分からない。

それから銃の扱いがひどい。自分の子どもには銃の扱いを慎重にしろと注意していたのに、当のクリス本人は家の中でジョークを言いながら振り回してる。しかもポンと棚の上において外出する。ちょっと前まで戦争の精神的後遺症に苦しんでいた夫が家の中で,しかも子どもの前で銃を使ってふざけているのを妻が冷静に見ていられるとはとても思えない。しかも妻も悪乗りするし!うーん、雑すぎる。

結論として、現在進行形の事象を扱うのは難しいのだと思う。各方面に配慮した結果、主人公にどのような人間性を持たせればよいのか分からなくなったのか?退役軍人へのサポートの必要性ってメッセージは感じるが、果たしてそれだけでいいのだろうか。それとも,この点が示されただけでも「ハート・ロッカー」以降のイラク戦争映画が進化したとみるべきなのか。確かに,「ハート・ロッカー」ほどには「ひよってんじゃねーよ!」とは思わなかった。ただし作品としてのメッセージは,「ハート・ロッカー」同様あいまいなままだったけれど。

クリント・イーストウッド監督作品のミスティック・リバーグラン・トリノが好きだ。どちらも暴力にとらわれた人間の葛藤をドラマティックに描いている。主人公は自身の振るった暴力に対して落とし前をつけたし,少なくともつけようする様子がよくわかる。全く別のやり方ではあったが。それだけにかなり期待をしていたのだが,ちょっと残念だ。5年後か10年後,アメリカ資本でイラク戦争がどのように描かれていくことになるのか,気になるところ。

戦闘シーンが何度かあり、それぞれ割と長い描写だったのだけど、それはとても分かりやすかった。

うーん、一晩寝てもう少し考えてみよう。