スラムドッグ・ミリオネア(2008,英)

スラムドッグ・ミリオネア 〜インド版トレインスポッティング



まだ観ていませんでした。この時期にまだ上映しているのは,KBCシネマのレイトショーのみ。この”レイトショーのみ”というタイムテーブルは「早く観ないとそろそろ終わるよ〜」というメッセージだと思い,金曜日にみに行きました。
この日は珍しく仕事が早く終わり,18時過ぎに帰宅。家にいるのがもったいなくて,一日家で仕事をしていた同居人を連れ出して天神へ。「串匠」で食事をして,その後KBCシネマへ。
この映画館はシートがゆったりしていて,何よりスクリーンを見上げるようなつくりになっているところが好きです。シートにもたれたときに頭は少し上を向くので,首に負担なく映画が楽しめます。

さて,この作品の監督はダニー・ボイル。私がみたことがあるのは,トレインスポッティング,普通じゃない,ビーチ,など。
これらの作品に共通する点としてまず思い浮かぶのは……とにかく,登場人物が走ること。そして走りながら画面が激しく切り替わること。

この作品も同様です。何か出来事が発生すると,とにかく走る,走る,走る。画面が切り替わる,替わる,替わる。多くは説明されないけれど,画面のせわしなさから少年少女たちに何か大変なことが起こっているのだということは観客に伝わるようになっている。

取り上げた題材は重い。だけれども映画全体としてはとても軽い作りになっている。そのくせトレインスポッティングのようなおしゃれさもない。トレインスポッティングは重い題材(ドラッグ,エイズ,貧困,友情,死など)を軽く扱うことの利点がとても生きていたように思う。軽快に,ポップに,若者の共感を掻き立てるつくり。
当時,私は高校生で,友人と一緒にこのちょっとイカれた若者たちに感情移入して「ユアン・マクレガーってかっこいい〜」と言っていたのでした。

それに対して本作の場合は,重い題材を取り上げてはいるけれど,それを軽く扱いすぎていて2時間枠の社会ドラマのようになっている。

どのように軽いかというと,人物の心の動きへの迫り方が浅いのだ。
ママンをはじめ主人公たちと敵対する組織のボスとの対峙や,主人公の兄の心の動きなどをもっと丁寧に描いてほしかった。特に兄についてはヒドイ。あれじゃ単に,弟思いだけど権力には弱く自分勝手で気分屋な人物が,最後にちょっといい格好をしてみただけみたいだ。

その代わりに,主人公のドタバタ成功劇として見れば,多くの人に受け入れられるかも知れない。レンタルDVDが出たら,すごく人気が出るんじゃないかな。金曜ロードショーとかも。自宅で,気軽に,家族で楽しめる感じ。

エンドロールは必見ですので最後までみましょう。まさかここできたか!のサービスを見逃したらもったいない。