扉をたたく人(The Visiter, 2008, 米)

扉をたたく人 〜学校で使える教育映画〜



7月30日に見ました。最近なぜかよくいくKBCシネマです。

スラムドッグ・ミリオネアを観たときに予告編で流れていたので,気になっていました。予告編から分かるのは,アメリカの移民問題,不法入国問題を扱った作品だということ。

で,本作を観てみると……予告編のまんま。そのまんまでした。

うーん,確かにシナリオはシンプル。余計なサブストーリーや伏線のばら撒きなどはまったくなく,ただただ本題のみをフォーカスして進んでいく。そのため進行のスピードはややゆっくりめ。ちょっとぐらいボーっとしていてもついてゆくことはできる。

ただし,それは単に単調であるとか退屈であるとかいうわけではなく,なんというか,焦点を絞りきっているという意味で,潔い感じがする。

たとえば,作品中には随所に,観る人をはっとさせるシーンがちりばめられている。約300人もの不法滞在の疑いのある人々が拘留されている拘留所の待合室の壁に,無神経にも張ってある「移民はアメリカの宝」というポスター。不法滞在の疑いで拘留された青年の母親がはじめて息子の彼女(セネガル出身)を見たときに発した「…黒い,黒いわ。」という言葉。などなど。社会の制度の中にある矛盾,人々の心の中にある矛盾。これらも全て,はじめの問題につながっているのだ。

とはいっても,ところどころに笑える場面(多くの場合,主人公が笑わせてくれるのだが)も配置されていて,息が詰まってしまいそうな重いテーマと特に後半からの重い展開に対して,適度に息抜きをさせてくれている。そういう意味でもよくできていると思う。

ということで,文部科学省推奨作品にでもして,全国の学校で道徳や現代社会やLHRや総合的な学習の時間にでも見せたらよいのではないでしょうか。ラブシーンもほぼないし,難しい解釈が必要な場面もない。大変お勧めです。

まぁ,もともと大規模に公開するつもりで作成されたわけではないようだし。単館映画での上映がほとんどのようだけど,DVDレンタルが始まったら,人気が出るのではないでしょうか。

ラストシーンはすばらしい。サブウェイは3拍子のリズムで走るのですね。いつか確かめてみたいです。