私の中のあなた(My Sister's Keeper, 2009, 米)

私の中のあなた 〜これは社会派映画ではありませんので,お間違いなく〜



あぁ,学会発表を2週間後に控え,まだ内容も固まっていないのに映画なんてみていてよいのだろうか…という葛藤に何とか打ち勝ち,行ってきました試写会に。in都久志会館

キャメロン・ディアスがスキンヘッドになる映画が秋に公開されるという情報を得てからはや数ヶ月。コレだけはどうしてもみたいと思って公開を心待ちにしていました。

監督はニック・カサヴェテス氏。彼の作品は「ブロウ」も「きみに読む物語」もみていませんので,本作が初めてです。ちなみに俳優でもあり,なんと「フェイス/オフ」にも出演しているらしい!誰の役だろう??

さて,この作品の感想を一言で表すと”良質な感動作”といったところかな。予備知識が予告編だけだったので,臓器移植をテーマにした社会問題が入っているのかなーとも思っていたのだけれど,そんなことは全くなく家族の感動モノでした。社会問題には全く触れておらず,臓器移植はあくまでも人間関係を表現するためのアイデアの一つとして取り扱われているだけ。まぁ,下手に問題提起するよりよっぽど好感が持てます。

ではどのあたりが感動作なのかというと……要するに,感動するのであります(笑)。だってだって「病気」と「子ども」と「家族」なんて,もう最強トリオじゃない。しかも,ただ単にだらだらと状況の悲惨さを流したり俳優に泣かせまくって感動を演出するのではなく,ちゃんと画でみせて,音楽できかせて,間で感情をあおって,演技で引き込むことで感動を創っているのである。

ストーリー自体は大して深いものではないけれど,映画に深みを与えているのが俳優たち。スキンヘッドのキャメロン・ディアスがほとんどノーメークで出演していたらしいというのもなかなかすごいが,何といってもケイト役の女の子がすごい。妹アナ役の子が注目されているようで,それにはもちろん納得。だけど私は,断然ケイトに注目です。比較的元気な頃と,病気が次第に進行していく頃,そしてかなり進行した頃…。うーん,これはメイクだけの効果じゃないよ。

パンフレットで謳っている「驚くべき真実」は結末近くで明らかになるのだが,まぁ普通にみていたら途中で何となく分かる。

少しだけ気になったことといえば,細かい仕込みが多いことかな。女性判事の背景とか,敏腕弁護士の持病とか,弟の失読症とか。そこまで感動を振りまかなくてもケイトの件で充分感動してますから。特に弟クンについてはフォーカスが中途半端なため余計にかわいそうな役割になってしまっている。

とはいえ,いずれにせよ良質な感動作に出会うことができた満足感を与えてくれる,よい作品だと思う。うむ。