マイケル・ジャクソン THIS IS IT(2009,米)

マイケル・ジャクソン THIS IS IT  〜そしてMJは輝きつづけるのだろう〜


ある夜,職場からの帰り道。すれ違った男性が手に持っていたCDに「THIS IS IT」の特徴的なジャケットを見つけた。それから数日後……ようやくみてきました。
平日の夕方のユナイテッド・シネマキャナルシティ13。この時間帯いつもはガラガラのスクリーンで座席なんて当然自由なんだけど,今回は全座席指定。客もこの時間帯としてはかなり多くて驚いた。上映期間が延長されることになったとはいえ,期間限定上映だからみんな見逃してはならぬと急いだのかな。(にしては公開からすでに2週間。平日の夕方にこの観客数は,やはり多い。)

幻となったコンサートツアーのリハーサル映像。ステージ上,舞台袖,カメラチェック,スタッフとの談笑……どんな場面のどんな瞬間であってもMJは絵になる。
しかしながら,いくら大物アーティストであっても,これはたかだかコンサートツアーのリハ映像。観客の前ではいつもバッチリ決めてる彼だって,例えばヘン顔であくびをしたり、「どっこいしょ」なんて言いながら椅子に腰掛けたり,そんなスーパースターの”スキ”を捉えた瞬間がちらほらと……。少しぐらいあったってよさそうなもんだ。けど彼には、そんなスキは全くない。まるで彼自身、この映画が公開されることをあらかじめ知っていたのではないか,と疑いたくなってしまう。
けれども次第に,疑いは思い違いであると分かる。完成度の高さは彼の演技力の高さを示しているのではない(もちろん一流のエンターティナーであることは私でも分かる)。そうではなく、製作スタッフがいかにMJをリスペクトしていたかということを示しているのだ。
観客はそれを冒頭から見せつけられる。バックダンサーたちはみな感動で声を震わせながら,我らがMJのすばらしさとこのツアーに参加できることの喜びを語る。

私は今までマイケル・ジャクソンの人柄についてほとんど知らなかった。まぁ今もだけど。その人柄について,今回最も印象に残ったのは,彼の他者に対する態度の誠実さだ。誠実に接された人は,当然ながら誠実に接し返すことになる。スタッフの間には優しい空気が流れる。

時にMJは神経質な子どもみたいにこだわりを見せる(駄々をこねているだけかも知れないけど…)。それに対してスタッフは決して「無理だ」とか「そんなことできない」とか言わない。どうすればMJに閃いたアイデアのともし火を消さずにすむか,彼の輝きを削らずにすむか,彼をより輝かせることができるかを一生懸命に考える。そしてスタッフは極力,提案をしない。アイデアを出すのはMJ。その実現を全力で支えるのがスタッフだ。だからMJが行き詰ると彼らはこう訊ねる。「MJ、僕には何ができるかな?」
そしてすばらしい舞台が作られていくのだ。みんな超一流の作品を作り上げる作業に関わっていることに胸をときめかせている。

歴代のヒット曲のいくつかと、たまに目にするゴシップ、そしてマイコーりょう。……これがマイケル・ジャクソンに対する私の知識のすべてだった。だけど今日だけは、私にもあなたをMJと呼ばせてください!

あぁー興奮した。シネコンの整った視聴覚設備をフルに使って、メイキング場面の特典つきミュージックビデオを2時間たっぷり楽しんだのです。はい。