ラブリーボーン(2009,米)

ラブリーボーン 〜想像力の限界〜


今年3本目の試写。現実世界で生きる人々の様子と、死んでしまったスージーがいる天国(?)の様子。この二つが交互に描かれながら物語は進む。
現実の様子はさておき、この天国のシーンが問題だ。CGを巧みに使いながら、天国世界を表現しようとしている。現実世界の人の動きに合わせて、それをデフォルメされた形で天国にも登場させたり、またスージーの感情の起伏に合わせるように風景が変化したりする。
だが、この天国の様子がお世辞にうまく描かれているとは言えない。なぜか。そもそも天国という誰もリアリティを持って捉えることができない舞台を選んだ時点でアウトなのか?いや、そうではないだろう。先日観賞した「アバター」もまた、誰も体験したことがない惑星「パンドラ」の様子をCGによって描いたが、こちらは監督のすばらしい想像力とそれを補うCGによって、私たちを大変楽しませてくれたばかりである。
アバター」によって、今の技術を使えば大抵のことはできるのではないか、いやむしろできないことはないのではないか、と思わされた。つまり、今のCG技術で補えない想像力はないのではないだろうか。本作のCGは「アバター」と同じCGスタジオで製作されたらしい。両者の差は、想像力の差と言うしかないだろう

さて肝心の内容はと言うと、正直退屈だ。時間も無駄に長い。何を狙っているのか分からないし、どのような層に向けているのかも分からない。
終盤にスージーが「もう一つやり残してきたことがある」とみんなに背を向けるシーンがある。きっと事件の真相を暴くのか,それとも家族にメッセージでも残しに行くのかと思ったのだが……なんと初恋の相手に○○してもらいに行く,というオチ二人が甘い時間を過ごしている間に,事件の真相は底なし沼の奥深くに沈んでいく。これには思わずずっこけた。

パンフレットを見るとでっかく「今年度アカデミー賞最有力」の文字。いやいや初めて聞いたし。いったいどの部門でノミネートされるんだよ。

20100121追加
殺人犯役のスタンリー・トゥッチが、ゴールデングローブ賞をはじめ俳優組合賞などいくつかの賞で助演男優賞としてノミネートされている。もちろん大本命のユダヤ・ハンター、クリストフ・ヴァルツが次々と受賞を決めている。うむ。