プレシャス(Precious,米,2009)

プレシャス 〜何とまぁシンプルな物語〜


試写です。何とまぁシンプルな映画でしょうか。ストーリーは単純だし、登場人物は少ないし、場面は家か学校か道を歩いているかぐらいだし。だから分かりやすいけど、何だか淡々としすぎているような気もする。物語自体は、正直に言ってあまり面白みがないような…。

そんな淡々としたストーリーにスパイスを与えているのが、プレシャスの妄想シーン。人気歌手、俳優、モデル、恋人。多くの人々の囲まれ、きれいなメイクとファッションに身を包み、ステージで輝く自分の姿を想像して日々の生活のモチベーションを保つプレシャス。

プレシャスのこの心の強さには驚くしかない。あんな境遇でなぜ腐らない?彼女があまりに強すぎるので、共感や感情移入にはちょっと程遠い。

ただし、現在のアメリカの一場面を覗き見て、それについて考える機会を与えてくれるという意味では、この作品はすばらしいと思う。これを事実そのものとみるか、あるいはデフォルメされた形で表現されているとみるかも、おそらく観客次第。”サラダボウル”(って言葉は今でも使うのかな?)の一面、ある種の境遇で生きる人の様子。彼女を取り巻く環境、彼女を取り巻く人々。彼らの生活スタイル。それを支える社会の仕組み、あるいは彼女にそのような生き方を強いる社会の仕組み。もちろんこれは映画だ。でも下手なドキュメンタリーよりもよっぽど考えさせられる。いつか授業で学生たちに見てもらいたいな。

それにしても母親メアリー役のモニークの目はマジ怖い、夢に出てきそう。ユダヤハンターのクリストファ・ヴァルツといい、二人とも納得の助演賞受賞です。