インセプション(2010, 米)

インセプション 〜映画の、映画による、映画のための映画〜


火曜日の中洲大洋劇場のレイトショーには、私たちを入れて10名ほど。毎回思うのだけれど、ここは本当に穴場だ。外見からは分かりにくいが、中はキレイでスクリーンは広いし座席もゆったりしているし角度もいい、おまけにいつだってすいている。それから他の劇場よりも割引サービスが充実していて無料鑑賞券だってすぐにたまる。天神とキャナルに挟まれてるという立地が原因なのかもしれないが、ここを知らない人が多いというのは、何とももったいない。

で、肝心の映画の話し。今年を代表する作品。映像もキャストも豪華絢爛だけど、それだけじゃない。脚本のよさつまり話の筋とストリーの進行の仕方、演出のよさつまり魅力的なキャラクターたちのセリフ回しや雰囲気作り、そして映像のよさつまり想像力の表現化。どれをとってもすばらしい。映画史に残る作品だろう。
設定はかなり複雑なのに、テキトーな新人教育だけで状況説明を終えてしまうという潔さもいい。説明が必要な箇所と省いて大丈夫な箇所の区別がうまい。説明不足が気になることはほとんどなかった。
何といっても夢世界の描写がよい。特に、夢と現実は表裏一体なのだという点の描写の仕方。現実や前の階層が不安定だと夢も安定しないし、現実の影響を少なからず受ける、という点が、たとえば雨とか音楽とか平衡感覚だとかでよく現れていて、常にどことどこが対応しているのだということが見ている方にもよく分かる。
個人的には第二階層がとても好きだ。「(500)日のサマー」ではナヨっとした文系青年トムを演じたジョゼフ・ゴードン=レヴィット扮するアーサーが大活躍。幾何学的なホテルの雰囲気と無重力アクション、そしてだまし絵。この作品の想像力のすばらしさが最もよく表れている。

レオ様演じるコブの個人的な秘密は途中でなんとなく分かってしまうが、それを補って余りある脚本なので全く問題ない。2時間半はあっという間で、終わると疲労感と頭痛がひどかった…。
映画館の大きなスクリーンで、音響設備で、あの印象的なBGMを聞きながら観ることができてよかった。