ウォール・ストリート(2011,米)

ウォール・ストリート  〜ラブ&ミステリー〜


1987年版「ウォール街」の後日談という位置づけなのかと思いきや,前作とのつながりは思いのほか少ない。いやほとんどない。「ブルースター航空」という単語が数回と,パーティでチャーリー・シーンが登場するだけ。なんとゲッコーが服役した原因もバドではないらしい。←ココに一番驚いた。
というわけで,物語は基本的に前作とは関係なく進む。もちろん前作を意識していないわけではない。マイケル・ダグラス扮するゲッコーは,前作ではあまり前面には登場せず,バドという青年が中心に描かれていた(気がする)。一方,今作でもバドの役割を担う青年が登場するが,あくまでもゲッコーのカリスマ性が物語を引っ張っていく展開。
タイトルバックやスタッフロールも前作を思い出させる懐かしい感じ。マンハッタンのビル街の空撮も味があってイイ。

テンポはいいし,マイケル・ダグラスは相変わらずカリスマ性十分だしあっという間の2時間だった。ただラストがな…なんだあのバースディパーティ。ちょっと予定調和すぎて…。

今作はラブストーリーの要素が大きい。恋愛映画が半分,ミステリー映画半分といったところ。お堅いがちがちの社会派モノにはなっていない。そのせいか,劇場には若い男女のカップルも多かった。若者からお年寄りまで幅広く楽しめそう。

GANTZ(2011,日)

GANTZ  〜「世にも奇妙な物語」でオーケー〜


ちょっとコメディ要素のあるシュールな雰囲気,一人称視点,絶妙なエロとグロ。完全に深夜23時代の連続ドラマでも観ているかのような気分です。いや,それを狙ったのかも。フジテレビが作れば『世にも奇妙な物語』のタイトルで出せるのに。

原作はなんとなく読んでいます。漫画の実写化としては成功していると思います。というか,雰囲気作りが非常にイイ。何といってもガンツ部屋での雰囲気。

CGについては,日本映画なので気にしないようにします。大仏殿はひどかったけど。ひどいといっても「ゼブラーマン」レベル。それにたぶんCGについてはある程度見切りをつけているのだろう。というのも,他の星人との戦闘シーンはたぶん(ほとんど?)CGを使っておらず,特に田中星人の件なんて人形の無機質でギクシャクとした動きとか,不気味な感じがよく出ていた。CGだけに頼るのではなく,見せ場はちゃんとある。(もしこの件が全面CGだったなら,むしろその技術の高さを褒めるべきだ)

結論として、原作の雰囲気があまり好きではないというのも手伝ってか、原作よりも好感がもてる。二宮くんの世界系っぽいキャラクターと一人称がうまく使われている。てか彼は最近この手の役柄が板についてきた感じだ。そうそう,ハリウッド映画を見慣れている人は、安全フラグであるはずの子どもや老人が登場直後に…な展開にひびるかも。

なお平日の夕方,仕事帰りに一人で鑑賞@ユナイテッドシネマ・キャナルシティ。邦画だしな,と思って前から3列目のど真ん中に着席。そして振り返ると後ろはカップルばかり。「ブルーノ」を一人で鑑賞したときとはまた違ったどきどき感を味わうことになった。

ザ・タウン(2010,米)

ザ・タウン  〜アラフォーおっさんの自分探し〜


残念ながら作品賞のノミネートはありませんでしたが,ベン・アフレックの監督兼主演作。ベン扮するダグの相棒役には「ハート・ロッカー」で爆弾処理が得意なサビシイ兵士を演じたジェレミー・レナー。ヒロインには「それでも恋するバルセロナ」で登場人物中唯一のまともな人物を演じたレベッカ・ホール

期待が大きすぎたのか何なのか,正直に言ってあまり面白くなかった。何でこんなに評価が高いんだろう。私がアメリカのことをよく知らないからかな。うーーん,ちょっと不安になってしまう。

役者たちの演技はさすが,すばらしいと思う。でもストーリーの説得力がイマイチ。例えばそうだな…。

アラフォーのおっさんたちがグレた高校生みたいにスケート場やパブにたまって酒や女の話,親世代の武勇伝なんかで盛り上がっている。…うーんイタイ。特にダグの相棒のジェムが変。あんなに気が早くて暴走するやつが常勝強盗団のサブリーダーとは思えない。
チームの団結力についても説得力がイマイチ。親世代から続く結束力の強いコミュニティーだから,というだけでは,ラストの彼らの捨て身の行動を説明できるのかな。もちろん,田舎や家族のローカルなルールやしがらみの存在についてはよく分かる。それに,それらに絡みとられて生き方が規定されてしまうことへの苦しみや戦いを描いた作品だって他にもある。でも本作は,それを第三者にも理解できるように描いているとは思えない。舞台となったタウンでは当然なのかも知れないが,こちらにも分かるようにしてもらいたいな。

そのあたりの説得力がイマイチに感じたので,結果的に私は,ダグの自分探し物語としか受け取ることができなかった。
「グッド・ウィル・ハンティング」では送り出す役だったので,今度は自分が旅立ちたかったのかな。

キック・アス(2010, 米)

キック・アス  〜ボッコボコにしてやんよ♪〜


登場人物がことごとくかっこいい。まずはニコラス・ケイジ扮するビッグ・ダディ。このオヤジがおかしすぎる。自分の娘(11歳)に防弾チョッキを着せて銃に撃たれる練習をさせているのが登場シーン。ビッグ・ダディへの変身(メイク)シーンでは目がイっちゃってる。暗闇のなか炎に包まれながら娘に的確な指示を出す場面では,思わずダディ死なないで〜〜!!と心で叫んでしまった。

それから娘のヒット・ガール。誕生日プレゼントは高級バタフライナイフ2本セットっておかしいやろ。ナイフやメカを使いこなし車の運転もうまい。でも見せ場は暗闇での一人立ち回りとラストのボスとの戦い。声もカワイイし,萌!

そう考えると主人公デイブ(アーロン・ジョンソン)がかすんじゃうけど,あの親子だけしか登場しなければただのアクション映画になっちゃうもんね。青春,ロック要素はデイブがひとりで担っている。まるで「エデンの東」状態のジョン・レノンの学生時代を演じたかと思えば次はこれ。でもどちらもロックってことでオーケー!

キャラクター以外の点では,色合いがステキ。原作がアメコミなだけにアメコミ的風合いのポスターなどもかっこいい。

ソーシャル・ネットワーク(2010,米)

ソーシャル・ネットワーク
〜若者ならではのイタさ。ほろにが青春映画〜


久しぶりに大本命の試写会。相方さんと観に行ってきました。楽しみにしていたので前情報はなるべく遮断して臨む。ドキュメンタリーっぽいのかな?ぐらいの気持ちで。
マシンガントークとともにずんずん進むセリフとストーリーに退屈する暇なんてなく、あっという間の二時間。
主要登場人物が大学生というだけあって、各人の言動とそこからの展開が若い。そしてイタイ,苦い!旬な社会派映画かと思いきや、これは完全に青春映画だった。いやーすっぱいね,ロックだね。

脚本はもちろんだけど,俳優さんもイイ!印象に残るのは主人公マーク・ザッカーバーグ役のジェシー・アイゼンバーグ。自己中気味で神経質気味で孤独気味な,だけどたぶん普通の大学生を感情豊かに演じている。他には共同創設者の友人やボート部の双子(なんと一人二役らしい),ナップスター創設者。どれもみな,観客が簡単には感情移入できないような癖のあるキャラクターで,すばらしい。

それからブリティッシュな感じの音楽もいい。ロックな青春映画にはぴったり。

普通の社会に生きている、一見すると普通で平凡な若者。だけど実は、自分の所属する社会にちょっとした違和感というか生きずらさのようなものも感じている。そんなちょっと孤独な感じの主人公像は、「ファイト・クラブ」や「セブン」にも共通しているようにみえる。上の2作品ほどのスケール感はないが、とても完成度の高い作品。大満足の一本でした。

戦場でワルツを(Waltz with Bashir, 2008,イスラエル)

戦場でワルツを 〜劇画のインパクト勝利〜


前編アニメーションのドキュメンタリー。ブルーレイで鑑賞したためかもしれないが,非常に色彩がきれいで夢を見ているかのような(いやむしろ夢に出てきそうな)気持ちにさせてくれる映画。黒、青、黄色を多用した色彩は独特だし,なにより劇画調のアニメのインパクトは大きい。しかもほぼ全編アニメーションなので現実と回想のキャップをあまり感じることなく、スムーズに物語へ入り込むことができる。

物語は,ある事件の日の記憶がすっぽり抜け落ちていて,事件の日に何があったのかをどうしても思いだけない主人公が,昔の仲間のもとを訪れて当時の話を聞き,少しずつ記憶を取り戻していくという流れ。この主人公は監督自身という設定にされており,後でメイキングで登場する監督がアニメで描かれた主人公の顔とそっくりだったのでおどろいた。

というわけで,いちおう物語の本筋は謎解き。ただしそもそもこの事件は実在の事件。なので見ている人は何があったのかあらかじめ分かっていることが前提。もちろん,どれぐらい詳しく知っているかという差はあるだろうが,少なくても事件が気持ちのよいものでは決してない,ということぐらいは分かる。だからミステリーの調子は抑えられていて,話は淡々と進んでいく。主眼に置かれているのは謎解きよりもアニメーションと音楽を組み合わせた回想シーンで,見ている人はこの回想シーンをもとに事件に対する想像力を膨らましていくという感じ。

アニメーションとは言っても,通常のアニメーションのようなデフォルメはほとんどされていない。全く同じ構図で,寸分の違いもない実写版を作成することも可能だろう。だが,もし本作が実写で作られていたとすれば,きっとこんなに注目はされなかっただろうし,観ていてこんなインパクトを受けなかっただろう。
戦争ドキュメンタリー映画としては,良作だろうと思う。というよりそもそも戦争ドキュメンタリー映画を作っている時点で,製作者側の筋書きや題材に対する視点・思想はかなりしっかりしているはずなので,駄作は生まれにくいような気もする。劇画調アニメーションのドキュメンタリー映画という,特異な発想は本作の大きな魅力となっている。

ハリーポッターと死の秘宝part1(2010,英米)

ハリーポッターと死の秘宝part1
〜そろそろ名探偵コナンくんの出番です〜


本当はユナイテッドシネマ・キャナルシティIMAXで観たかった。でも終電時間から逆算するとどうやっても時間が合わずにムリ。結局、しぶしぶと普通の字幕で鑑賞。

暗い,本当に暗い。黒と青が基調の色彩は本当に物語り全体の雰囲気を暗くしている。アズカバンや炎のゴブレットのときのような学園ワクワク感は全くない。